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ありがとうございます

 すっかりご無沙汰しております。

 2022年11月1日に新刊『ドイツの家と町並み図鑑』をエクスナレッジより上梓しました。そして、なんとこのたび発売からひと月ちょっとで重版が決まりました!

 本当に嬉しいです。

 お買い上げいただいたみなさま。
 SNSなどで広めてくださったみなさま。
 書評に取り上げてくださったみなさま。
 販売してくださった書店やエクスナレッジのみなさま。
 心から感謝しています。ありがとうございます。

 『ドイツの家と町並み図鑑』のあとがきにも書きましたが、ドイツの建物に関する本を書きませんかというメールをある日編集者さんからいただいたとき、私は大興奮したんです。好きなんですよ、建物を見るのが。
 だけど商業出版で出せるとは、それまで思っていなかったんです。ドイツの建物、それもお城や教会でない普通の家屋なんて、あまりにもニッチすぎるかと思って。だから、好きなテーマで商業出版として本を作れるかもしれないと聞いて、天にも昇る心地でした。

 そんなわけでこの本は、私の全身全霊を注いで作りました。本書の制作中は、最初から最後までずーーーっとテンション最高潮でした。

 もちろんこれまでの著書も全力で作ってきましたが、今回は掲載内容・台割・写真セレクト・ラフまで全部案を出して、編集者さんと相談しながら形にしていきました。
 私の中に「この建物は、こう見せたい」というイメージが強くあり、それを表現できるように撮影し、紙面で展開したかったんです。もともと私は編集者なので、どう構成するか、どう見せるか、どう読者に伝えるかを常に考えているだと思います。私の案をずいぶん取り入れてくださったエクスナレッジの編集者さんに、とても感謝しています。

 撮影も、取材も、台割・ページラフ制作も、すべて楽しかった! この時点でのベストを尽くしました。1年後、2年後にはきっと「ここはもっとこうしたい」という点が出てくるのでしょうが、出版した時点では、やれることはやりきった思いでいっぱいです。

 本書はドイツ・ブランデンブルク州在住のチカ・キーツマンさんとの共著です。チカさんとは、「ベルリン・ブランデンブルク探検隊」というユニット名で2020年に一緒に給水塔の本を自費出版したり、地元の建築などを紹介するYouTubeをやっています。だから、チカさんと一緒にやるのは当然のことでした。

 取材・原稿執筆はチカさんと私が一応分担していますが、お互いに意見を出し合い、共同作業で進めました。写真は、7〜8割が自分たちで今回撮り下ろしたもので、残りは各自がこれまで撮りだめた写真を使っています。

 本書が出たいま、チカさんの存在なしではこの本はできなかっただろうと思います。チカさんと私は視点や得意なことが少し違うので、お互いの強みを活かせます。ふたり揃えば一人でやるよりも5倍も10倍もいいものができる、そう確信しています。

 いい本ができたと思います。
 ぜひご覧になっていただきたいです。
https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767830636


 私はあとがきで「この機会をいただけたことで、数年ぶりに生きる喜びを感じました」と書きましたが、まったく大げさではなく本当のことです。本書の制作をしていた間は毎日楽しく、充実していて、私は生きているのだと感じました。それは数年ぶりに得られた感覚でした。

 じつはこの数年、まだベルリンに住んでいた頃から、何事に対しても気力が出ない日々が続いていました。何を書くにも考えすぎてしまって、まったく筆が進まないことが増え、もうこのまま書けないのではないかと思ったこともありました。おそらく年齢のせいもあるのだろうと、婦人科に通ってもいます。

 でも『ドイツの家と町並み図鑑』を作っている間は本当に楽しく、「こうしたい、ああしたい」というアイディアがあふれ出て、「あぁ、私まだこんなにがんばれるんだ」と気づきました。この本のお陰で、元気になれました。

 本書の発売後にみなさまから温かいお言葉をたくさんいただき、これからもがんばろうと思えました。本当にありがとうございます。

 素直に書いていきたいです。
 これからも、どうかよろしくお願いします。
 

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『ベルリン・ブランデンブルク探検隊シリーズ 給水塔』表紙です


 7月末にドイツ・ブランデンブルク在住のチカ・キーツマンさんと出した本『ベルリン・ブランデンブルク探検隊シリーズ 給水塔』の電子書籍が、本日9月15日に発売になりました! プレゼント情報があるので、最後まで読んでみてください!

 電子書籍版『ベルリン・ブランデンブルク探検隊シリーズ 給水塔』は、チカさんのオンラインショップでお買い求めいただけます。1回のご購入で、PDFとEPUBの2バージョンをダウンロードしていただけます。矢印の先をクリック→「まにあっくドイツショップ」

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まにあっくドイツショップ

 本の詳細については、チカさんのブログ「ChikaTravel」の記事をご覧ください→「ベルリン・ブランデンブルク探検隊シリーズ 給水塔」を出版しました

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チカさんのブログ記事


紙の本出版から電子書籍化へ


 一言で説明すると、この本は給水塔好きの趣味が高じて、ふたりで本を作ろうと意気投合して出した自費出版の本です。ドイツのベルリンとブランデンブルク州の給水塔85基を、時代背景とともに紹介しています。

 給水塔というだけでもわりとマニアックなテーマなのに、さらにベルリンとブランデンブルク州というエリアに限定するなんて、どんだけニッチなんだよと作った本人たちも思っていました。だから最初から商業出版でなく、自費出版で出そうと決めていました。

 いったい何人の人が買ってくれるのか? 出す前はまったく見当がつかず、制作費はすべて自腹というのもあり、少部数限定で刷ったんです。

 そして、チカさんと私がそれぞれTwitterとFacebookで出版告知をしたところ!
 なんと発売3日で、ほぼ売り切れたんですよ!

 いやー、びっくりしました。まさかこんなに大勢(少部数ですけど、私の感覚的には大勢)の人が興味を持ってくれたとは。ありがとうございます!!
 急いでチカさんと今後の対応について話し合いました。つまり、増刷するか、そのほかの策を考えるか、です。

 増刷は現実的に難しいと判断しました。なぜなら本書はドイツで印刷しましたが、購入してくださる方は日本在住の方が中心です。再度ドイツで作って日本に送るとなると、コストが嵩みます。かといって日本の印刷会社で刷ったら、紙や色が第一版とは異なる可能性が大きそう。
 熟考の末に、電子版を出すことに決めました。紙の本をデザインしてくださった守屋亜衣さんがデータ化を手がけてくださいました。

 今回の電子版発売を記念して、チカさんと私でオンライン対談をしました。ふたりでこの本を作ったときの思いやエピソードを、あれやこれや話しています。チカさんのポッドキャストでお聞きいただけます。こちらをクリックしてください→ChikaCaputh


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『ベルリン・ブランデンブルク探検隊シリーズ 給水塔』サンプルページ(クリックすると見開き分が表示されます)


電子書籍発売記念大感謝プレゼント!


*電子書籍版『ベルリン・ブランデンブルク探検隊シリーズ 給水塔』概要

・オールカラー 980円
・全48ページ+電子版だけのボーナスページ4ページを新規収録! 
・電子版ボーナスページでは給水塔タンクの種類と設計者、タンク内部への潜入ルポを掲載
・形式はPDFとEPUBの2バージョン。一度の購入で両方ダウンロードしていただけます。

さらに! 電子書籍版発売記念大感謝プレゼントとして

ドイツの主な給水塔マップ

紙の本・電子版ご購入のみなさまにもれなくプレゼント!

 既に紙の本を買ってくださった方には、この給水塔マップのほかに、電子版ボーナスページ4ページのPDFももれなくプレゼント!

「紙の本を買いそびれた」
「どんな給水塔があるのか見てみたい」
「スマホとかで気軽に読みたいな」
 
 そんな方も、そうでない方も、ぜひこの機会に電子版をお求めください!

 お求めはこちらです→「まにあっくドイツショップ」


注:オンラインショップで電子版をお買い上げ後にPDFとEPUBのデータをダウンロードいただけますが、私が日本で購入テストをしたところ、購入直後にダウンロードしようとすると失敗することがありました。しかし翌日には問題なくダウンロードできました。もし直後にダウンロードできなかった場合は、大変恐れ入りますが翌日改めて試してみてください。もしそれでもダメでしたら、お手数ですが久保田までメールでご連絡をお願いします。メール:info@kubomaga.com


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ヘルシンキ経由で東京成田へ


 無事に日本に帰国しています。
 
 前回私がこのブログで日本への本帰国をお知らせしたところ、いろいろな方からメッセージをいただきました。たとえベルリンで頻繁に会っていなくても、「ベルリンにいる」こと自体に意味があったのだなと感じています。
 私の仕事は基本的に一人で取材して書くという形で、みなさんからのリアクションを直接いただくことは少ないです。それで、自分で勝手に落ち込んだりすることもありました。
 今回多くのメッセージをいただいたことで、思い上がりかもしれませんが、書いたものを通して多くの方と共に生きていたのだと感じました。改めて、ありがとうございました。

 今回は、ドイツ出国から日本までの帰国の道のりについて書こうと思います。コロナ禍における帰国は、(少なくとも現段階では)レアな体験だと思うので、自分のためにも記録しておきたいんです。ただし、ここに書くことはあくまでも私の帰国時で、常に当てはまるわけではないことをご留意ください。


フライトはマスク着用義務、東京行きは超ガラガラ

 私のフライトはフランクフルト発、ヘルシンキ経由の成田着というルートで、航空会社はフィンエアーでした。航空券を予約したのはドイツで新型コロナ感染が広がる以前で、本来のルートはベルリン〜ヘルシンキ〜羽田。その後コロナ禍がやってきて到着空港が羽田から成田に変わり(これはフィンエアー側の変更)、さらにベルリン・テーゲル空港閉鎖騒動で(結局は8月現在も営業していますが)フランクフルトから出発することに自主的に変更しました。
 フライト日は当初の予約から変更なし。フィンエアーは6月末まで日本行きフライトを運休していましたが、7月から運航再開したのはラッキーでした。

 私が帰国したのは7月下旬です。その時点で、ドイツからEU内への移動は既に可能でした。バカンスシーズンということもあってか、フランクフルトからヘルシンキへのフライトは9割ぐらいの席が埋まっており、私の隣にも乗客が。若干不安でしたが、フライト中はマスク着用義務があったために飲食時以外はずっとマスクを着けていましたし、機内でおしゃべりする人も少なくて静かだったのは幸いでした。私はふだんフランクフルト空港を利用しないので、通常と比較した空港の混雑具合は不明です。
 
 フランクフルトを出発した飛行機は、順調にヘルシンキ・ヴァンター空港へ着陸。
 
 私がなぜ日独間の移動に好んでフィンエアーを利用しているかというと、飛行時間が短くてラクなのと、乗り継ぎとなるヘルシンキ・ヴァンター空港がコンパクトでわかりやすく、快適だから。そのヴァンター空港が、今回はコロナのためにガラッガラで、ある意味さらに快適でした。閉店中のショップやカフェも多く見受けられましたが、水やお菓子などを買う分には問題なかったです。ちなみに、ムーミンショップは営業していました。さすが(何が)。

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カフェは開いてたり、閉まってたり

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日本行きフライトが出るノンシェンゲンエリア。シェンゲンエリアに比べ、さらにガラガラでした


 乗り継ぎには2時間以上あったので、超余裕。開いている店も少ないから、ショッピングに時間を取られることもありません。空港のワイファイにつないで誰もいないカフェでネットサーフィンをしたりしているうちに、成田行きフライトのボーディングタイムに。


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閉店中のムーミンカフェでネットサーフィン三昧

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かわいいクリスマス小屋。こういうアピール、上手だなあ

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クリスマス小屋を独り占め


 成田行きフライトのゲートにいたのは数十名くらい。え、これしか乗らないの......と驚きましたが、こんな時期に日本に飛ぶ人(飛べる人)は少ないでしょうね。日本は入国拒否対象地域からの入国者を厳しく制限していますから(入国拒否対象地域に滞在していた外国人は、たとえ日本の永住者だったり日本人配偶者がいても、条件によっては入国拒否対象になります。それは非人道的ではないかと思います。日本国籍所有者はその限りではありません。詳しくは外務省海外安全ホームページを参照してください。https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html)。

 そんなわけで、あっという間にボーディング完了。

 着席すると、私の周りに座っていたのは数名だけ。横一列は誰もいなくて、3人がけシートの手すりを上に持ち上げ、ほとんど横になって帰ってきました。ラクでしたが、航空会社はこんなに乗客が少ないと厳しいはず。

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私の座席の横一列はすべて空席でした


 機内サービスは簡略化しているとのことでしたが、私にはまったく問題なかったです。もともとそこまで細かい気配りを私は求めていませんから(ぶっきらぼうなのは嫌ですが)。ふつうに食事と飲み物サービスはあったので、それで十分です。

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夕食の野菜ラザニア


 いつもと違ったのは夕食で、メニューは野菜ラザニア一択でした(事前にベジタリアン料理を予約していたわけではありません)。こんなに乗客が少ない状況で複数の選択肢を用意するのはもったいない気がしますし、肉を食べる人でも野菜ラザニアなら食べた満足感もそれなりにありそうです。私はいいやり方だと思いました。

 夕食後は3人がけシートを占領して、横になって休憩。朝食はごく普通の卵料理にパンという内容でした。


「不要不急」の定義とは?

 そして、無事に成田空港着陸。
 機内でほとんど待つこともなくそのまま降りると、そこには係員の方がいて数名ごとに並ばされました。誘導されて行った先は、検疫のPCR検査コーナー。検査前にまず個別に書類に記入し、説明を受けました。書類では滞在国や滞在期間などについて答え、そこから非接触型体温計による検温、空港から自宅までの移動手段の確認と帰国後翌日から14日間は不要不急の外出は控えて待機するようにとの説明がありました。

 私は待機期間は東京の自宅にいられて、空港から自宅までは家族とともにレンタカーで帰ることが決まっていたから簡単なのですが、地方に住んでいる人は公共交通の利用なしでどうやって帰れるのかと思います。現実的な要請とは思えません。

 ところで「不要不急の外出」って、具体的にはなんでしょうね。たとえばベルリンでは、コロナ制限下での生活を送っていたときも、健康維持のための散歩は許されていました。14日間一歩も外に出ないとコロナの感染は防げるかもしれませんが、心身ともにおかしくなりそうです。それで聞いたんですよ、散歩に出ていいかどうか。

 答えは「散歩は不要不急である」と。つまり、控えろということです。たとえば、食料がなくて買い物に出るのは必要な外出なのでよいとのことでした。どちらかというと買い物のほうが人とのコンタクトがあるので感染リスクが高そうですが、食べるものが何もなければ買いに行くしかないのも理解できます。
 そんなやり取りがあり(別に喧嘩腰ではなく、普通の質疑応答です)、最終的に自分の中で「不要不急かどうかは自分で判断する」と決めました(説明受けてる意味がない?)。

 厚労省から帰国者を対象にしたアンケートが14日間あるという説明も受けました。LINEで連絡が取れる人にはLINEを通じてアンケートに答えられるそうなので、私はそうしました。実際にアンケートが始まったのは帰国後4〜5日経ってからで、待機期間の14日間を過ぎたら来なくなりました。アンケートの質問は2つあり、1つめは自分や家族が37.5度以上の発熱がないか、2つめはせきや喉の痛みなどの症状がないかどうかでした。

成田空港でのPCR検査

 説明後は、いよいよPCR検査。鼻の穴に綿棒を突っ込む検査です。
 検査前に検査方法をビデオで流していました。それによれば、椅子に腰かけて、顔をやや上向きにしていればいいようです。不安はありましたが、無料でPCR検査を受けられてラッキーという気持ちもありました。

 ほとんど待つことなく、空いているコーナーに呼ばれました。「はい、ではお荷物はここに置いていただいて......こちらにおかけください」。検査員の方の指示に従い、椅子に座ります。
「左右どちらの鼻の穴が入りやすいか、人によって違いがあるんですよ」とのこと。まずは右の鼻の穴に綿棒がスルスル......と入ります。綿棒は長くて細いもので、それほど痛くはありませんでした。でもどうやら右側は入りにくかったようで、次は左側に綿棒が。今度は奥まで届いたようで、無事に検査終了となりました。

「万一今後またPCR検査をするようなことがあれば、左側のほうが入りやすいです」と教えてもらったので、忘れないためにも書いておきます。
 私は左の鼻の穴のほうが、綿棒が奥まで届く。

 検査自体は5分もかからなかったと思います。帰国前に検索した情報では、空港で何時間も待たされたという体験談も出てきたので私もそれなりに覚悟はしていましたが、私のときは待ち時間はほとんどなく、非常にスムーズでした。

 私の場合は家族が空港まで迎えに来ていると言ったためか、検査結果を待たずに検査終了後はそのまま帰宅できました。検査結果がLINEで届いたのは、検査から2日後。結果は陰性でした。

 ドイツを発つ前は「とにかく無事に帰国できればよし」とだけ思っていたので、あまりにも順調な帰国に拍子抜け。ともあれ、ひと安心しました。
 これからは東京の生活が始まります。


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さよなら、ベルリン

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大好きな、ベルリンの家


 「あなたのことは好きだけど、もう一緒にいられない」
 こんな理由で別れを切り出す人を、私はクソだと思っていた。そんなのはきれいごと。なのに、いまの私のベルリンに対する気持ちは、それしか表現しようがない。

 私は日本に本帰国します。

 日本への本帰国を考えはじめたのは3〜4年ぐらい前からでした。ベルリンで好きな場所が年々消えていき、来た当初のようなワクワクした気持ちになることは少なくなりました。
 街は生き物だから、変化するのは当たり前。私だってもう長いこといるのだから、新鮮な気持ちが薄れていくのは当然です。でも寂しく感じることが増えました。
 
 ただそれは私にとってはそうだというだけで、ベルリンという街の魅力がなくなったわけではありません。たとえば、以前は日本人がベルリンで就職するなんて考えられなかったと思います。ベルリンは大企業がなく、ドイツ国内ではほかの大都市に比べて失業率が高かったので、ドイツ人ですら就職が難しいと言われていましたから。
 でもいまは違う。この街で、企業で活躍している若い日本の人たちは何人もいます。気の利いたものや、おしゃれな場所も増えました。いまのベルリンのほうが好きな人、いまのベルリンだから暮らせる人はいるでしょう。

 あの頃はよかった、と言う趣味は、私にはありません。ベルリンの発展と私の人生がシンクロしていたと感じられた時期が終わったのなら、それはもう日本に帰るときなのだと思います。

 ベルリンで会った何人もの日本人の方から、私の本や記事でベルリンを楽しみました、ベルリンに来るきっかけになりました、というお言葉をいただきました。とてもうれしく光栄で、ちょっと涙ぐんだりもします。と同時に、責任も感じます。
 私は情熱を注げるものしか書けない。生半可な気持ちでだましだまし続けるのは、自分に対しても読む人に対しても誠実ではないはずです。

 私の目標は、「よく生きる」こと。 別の言葉でいえば「生き切ること」です。そのために、そろそろ環境を変えるときだと、心が言っているのだと思います。


 日本の家族も大きな存在でした。正確に言うと、日本にいる私の夫と両親です。私がベルリンで家庭を持っていたのであれば話はまったく別ですが、私はベルリンが好きだという理由だけで、ひとりでずっと暮らしてきました。でも両親も高齢だし、自分自身も年を取ります。大切な私の家族と、もっとたくさんの時間を共に過ごしたいと思うようになりました。本帰国自体は昨年すでに決めていましたが、その後コロナ禍が訪れて、その気持ちが一層強くなっています。
 これまで何も言わずに私の滞在を受け入れてくれた家族には、感謝の気持ちしかありません。


 本帰国で家を整理していて、これまでいかに多くの人に支えられて来たかを改めて実感しました。ここで出会ったすべての人に、ありがとうございました。

 ベルリンはいまも大好きです。だから来年また来ます。
 それまでの間、さようなら。またすぐに。


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日独協会さんのトークイベントで ©日独協会

(*ベルリンのお店やライフスタイルに関しては、ベルリン情報ブログ「おさんぽベルリン」をぜひご覧ください。バリバリ書いてます)


 昨晩、6週間の一時帰国からベルリンに帰ってきました。帰国中のことをこの「クボタマガジン」ブログで全然書いていなかったので、遅ればせながらご報告です。ズュルト島の旅行記の続きは、また書きますので。

 私は日本に一時帰国をすると、4〜5週間はいます。今回は6週間で、いつもよりもちょっと長めでした。
 よく「日本で何をしているんですか?」と聞かれるんですが、原稿書きなどの通常業務のほかに、日頃お世話になっている会社にご挨拶や打ち合わせに行ったり、トークイベントなど日本でしかできないことをやっています。友人にも会います。そしてできるだけ家族と一緒に過ごします。なので私にとって一時帰国は、仕事とプライベートの両方を満たすもの。毎日があっという間で、6週間前の帰国直後がはるか昔のことのようです。

 トークイベントは3回やり(イベントの事前告知をこのクボタマガジンでやらなくてすみません。告知関連は私のFacebookTwitterをご覧いただくのが確実です)、大学の講義で3コマ分お話しもしました。

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朝日カルチャーセンター横浜教室の1日講義で

 
 トークは、朝日カルチャーセンター横浜教室では「ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方」、日独協会では「ドイツでフリーランスライターとして働く」という内容でそれぞれ1回ずつ話しました。そのほか同じく日独協会主催のフェーダーヴァイサー(期間限定でしか飲めない若いワイン)イベントではゲストとしてプチトークを行いました。どれも話す内容も、ご来場者の方々の顔ぶれも違うので1回1回がまったく別の経験です。

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飲んで喋って楽しかったフェーダーヴァイサーイベント


 特に日独協会の「ドイツでフリーランスライターとして働く」トークイベントは、私自身こうした内容をお話しするのは初めてなこともあって、ずいぶん喋りましたね。ご来場者は若い方が多くて、熱気を感じました。私も自分の仕事について、デメリットもたくさん伝えました。実際のところ、デメリットは多いですから。

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日独協会さんのトークイベント ©日独協会


 大学でゲストスピーカーとして話すのは、私にとっても学びの機会。私が一方的に喋ってもいいんですが、学生さんたちのリアルな意見も聞きたくて、なるべく話してもらうように心がけました。だってなかなか大学生と話す機会はないですからね。どんなことを考えているのか知りたいんですよ。たとえそれが、講義という場での限られた本音だったとしてもね。
 特に若い人には、自分がいま生きている世界以外のことも知ってほしいです。それが、自分の自由を広げることにつながると思うから。

 イベントや講義、それに友人たちと話していて思うのは、ドイツ・ベルリンの暮らしのことは全然知られていないのだなあということ。まあ、当たり前といえば当たり前なんですが、これまで何十回、何百回と書いたり話したりしてきたので、日本ではもう少し知られているかなと勘違いしてしまうんです。でも、ドイツファンでもない限りは、ドイツの生活についてなんて興味ないですからね。

 たぶん私は、ドイツファンではない人に対して、ドイツ・ベルリンのことを書いたり話したいんだと思います。その理由は2つ。
 1つは単純にベルリンが好きで、そのよさを伝えたいから。
 2つめは、日本とは違う世界を知ることで、自分や日本について見つめ直してほしいから。それが自分のより充実した暮らしや日本の未来につながると考えています。

 現在のような、日本とベルリンを行き来する暮らしをずっと続けるとは思っていません。でもベルリンにいるうちは、これが私にできることという気持ちでやっていきます。


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